一年前。





行きはあんなにも緊張していた出入国も、帰りはどこも拍子抜けするくらいすんなりと終え、わたし達はあっさりと日本に帰国した。
空港から一歩外へ出ると、日本は春を通り越して初夏のような気候。
大きな荷物を前にして自宅に帰るためのシャトルバス乗り場に並んでいると、バスの運転手さんと荷物係のおじちゃんが「桜が見事に満開でさー、外国からのお客さんも喜んでるよ〜」と話している。
なんとなく今年の桜は間に合わないかな…と思っていたので、胸が少しどきどきとした。
バスに乗り込んで非日常な空港エリアから抜けると、所々に桜の木を見つける。
どれも驚くほどに見頃で、それらを目で追いながらまるで羊を数えていたみたいに夢の中へと落ちていった。
帰宅。
旅の余韻もそこそこに、大量の洗濯物を次々に洗い、あっという間に夜がきた。
えみちゃんの家まで風呂を借りに行き(我が家のお風呂は前日にお湯を沸き上げる仕組みになっていて、旅行中はその電源を落としていたので、帰国した当日はお風呂に入ることが出来なかった)、久しぶりに浸かった湯船の気持ちよさに女性らしからぬ声が上がる。
えみちゃんが作ってくれていたいちご大福と日本茶をいただきながら、沢山の話と共に一つ一つお土産を渡した。
にこにこと話を聞いてくれるえみちゃんの顔を見ていたら、「ああ、帰って来たんだなぁ…」と思う。
それぞれの親に連絡を入れて、時差を跨いだ長い一日は終わった。