土曜日。アイスランドで撮影してきた、ブローニーフィルムの現像が上がる。
今回、アイスランドで何を撮影して来たのか。
そのことを話すには、まだ少しの勇気がいる。
思っていた以上に、自分のブランクは大きかったのだ。
市川準監督の映画『あおげば尊し』で、少年は死にゆく老人を前に「さよなら、お父さん」と言う。
父親の死を受け入れられなかった少年が、老人の死を通して、死ぬということと向き合った瞬間だった。
わたしにとっての今回のアイスランドは、死者と向き合うための旅だったように思う。
これまで自分が得意としてきた撮影スタイルを捨てて、徹底した下調べのもとに撮影を行った。
雨を浴び続け、暴風に腰を据え、じっとその時を持つ。
まだ発表も何も決まってはいないのに、制作へ向かうこの強い気持ちはなんだろう。
そして。こうしてたまっていく他の風景写真は、いつの日か使い道のあるものとなるのだろうか。