朝。携帯電話のメールに、シゲルさんが草原で出会ったグースの親子の写真を送ってきてくれました。この写真をわたしにと、グースの親子を追いかけるシゲルさんを想うと、心が和みます。メールを送るために、電波の届くガスステーションまで車を走らせてくれたのでしょうか。シゲルさんに会いに行った時、わたしもそのガスステーションへ連れて行ってもらいました。夜遅く、パジャマの上にコートを羽織って出かけました。そんなヤングな事をするのは二十歳そこいらぶりだったので、妙に胸がわくわくとしていたのを覚えています。あちらのガスステーションは、日本でいうコンビニエンスストアのようなものです。田舎町であるのに、夜のガスステーションはにぎわっていました。若い黒人の男性がレジを打っていて、煙草とコーヒーを買っていたシゲルさんにおまけをしてくれていました。それだけで、もうわたしはこのガスステーションが好きだと思いました。
昼。わたしは友人とピザトーストの話をしていたら、無性に食べたくなってきて、お昼ごはんにピザトーストを作りました。新たまねぎを使ったら、甘くシャキシャキ。美味しかったです。今は食後にヨーグルトを食べながら、これを書いています。ジャック・ジョンソンがあまりにも気持ちよく聴こえます。夏が来たのです。開け放たれた窓からは、隣のお家の人が煮物を炊いている湯気のにおいが香ってきました。部屋に冷房がないのは辛いけれど、いいなとも思える瞬間です。今朝も八時頃から、一筋向こうの子供達は泣き声の大合唱。今日は日曜日なので、お父さんの声だって聞こえます。そう、ここのお父さんは異常なハイテンションなのです。いや、会ったことはないのですけれど…。
先日届いた手紙のお話しです。
「僕達が会えるまでに近道なんてないけど、この一日一日が全てミナコに会える日に繋がっているから、一日一日が本当にかけがえのない、素晴らしい日だと思えるのです。
近道出来たらいいなぁ…って思うけど。笑」
シゲルさんの言葉が、わたしは好きです。
文通を始めたこの一年九ヶ月で、字も随分と読み慣れました。シゲルさんはわたしの字から、わたしの体調まで読み取ることが出来るようになりました。近道が出来ないわたし達は、それでもこの一年九ヶ月で知った事が沢山あります。「シゲルさんから教えてもらったこと帖」には、沢山の言葉が並びました。わたしは思います。毎日毎日手紙を書いているのに、それでもまだまだ言葉を書きたいなと。そして、愛する人とのことを綴った、そんな本と出会いたいなと。濱谷朝さんの『女人日日』。マグナムの写真家、濱谷浩さんの奥様が書かれた随筆集です。今、読みたいな…と思っています。復刻はないのでしょうか。それよりも、いつか出会えると…わくわくしながら古書店をのぞく方が楽しみが増えていいものかもしれませんね。そう言えば、いつかの手紙でシゲルさんは言ってました。
「古本市が出たなら、朝から弁当持って行きましょう」
夜。さあて、今夜も時差を辿りながら手紙を綴ります。