その人は、茶色のコーデュロイパンツに、ライダースを羽織っていました。
あと、シゲルさんにはあまり似合わなさそうなかわいらしいニット帽に、
鮮やかなオレンジ色の巻物。
綺麗な笑顔と整った爪が印象的で、その人を初めて見かけたのは、
実はシゲルさんと出会うよりも少し前の事でした。
冬耳くんという変わった名前を持つ彼は、シゲルさんの古くからの友人です。
この日、海を見ました。
雨男二人に、なんだか近頃どうも雨に降られるようになった女が一人。
日本海の岬で、海を見ました。
此処がどこなのか、それはどうでもいいように思えて、
月並みにわたしは「地球はおそらく丸いのだろうなぁ」と、
ゆるく湾曲していく水平線を見ながらぼんやりと考えておりました。
気持ちのいい風景の目の前には、穏やかに笑っている二人の姿があります。
あぁ、わたしは冬耳くんといる時のシゲルさんが好きだなぁ…と、
それは例えば江國香織の『きらきらひかる』のような…
状況は全く違うのですが、そんなふうに思いました。
早朝から深夜まで、ずっと車を運転してくれた冬耳くん。
わたしは心地よさの中、後部座席でずっとうとうととしていた事が、
なんだか今でも申し訳なく思うのですが…
ふと目が覚めた時の冬耳くんの言葉を思い出します。
「晴れていたら、星が綺麗やろうなぁ」
真っ暗な田舎道の中、車はどんどん帰路へと進んでいきます。
そう、今は曇っていて星空は見えないけれど、本当は沢山の星が頭上には輝いていて、
その事を感じる事が、目には見えないものを感じられる事が、
とても大切なのだろうなぁ…と思えた一日でした。
冬耳くん、次回はシゲルさんのご実家に満点の星空を見に行きましょう。
本当にどうもありがとう。
素敵な一日でした。
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