奈須くんが我が家へやって来てくれました。
朝から晩ごはんの準備に取りかかり、午後からやって来る奈須くんを待ちます。
今日は本当にいいお天気。
お台所の窓から差し込んでくる光が野菜をきらきらと照らしていて、
その様子を眺めていると気持ちがたおやかになっていくのがわかります。
お料理も洗い物もお洗濯も、今、一つひとつに喜びを感じる事が出来る。
ターシャおばあちゃんも、こういった気持ちで毎日を暮らしていたのでしょうか。
「ぱお」と駅に降り立った奈須くんは、
この田舎町を「遠い昔に知っている懐かしいにおいがする」と言っていました。
唯一、駅の近くに一軒だけある喫茶店へと案内して、
新しい暮らしの話を聞いてもらいます。
思えば、こうして奈須くんと話しが出来たのは、
もう随分と久しぶりだったのではないでしょうか。
日が落ちるまでお店で話し込み、すっかり空気も冷たくなった頃にうちへと帰ると、
奈須くんは茶色の包装紙に包まれた箱を「どうぞ」と言ってくれました。
丁寧に包装を剥がしていくと、
驚く程に繊細なデザインと創りの綺麗なガラスコップが二脚現れます。
それは坪井浩尚さんデザインの“SAKURASAKU glass”というガラスコップ。
その素敵さを上手く写真に撮りたいと思いましたが、今の季節にはまだ難しく、
夏になったら上手く撮れるかな…
また暖かい季節がやって来たら写真を載せたいと思います。
わたしはこのコップを使って、早く色々な人をおもてなししたいなぁ…
みんな、どんな顔をするんだろう…そう考えていました。
この事を思いついてしまう事に、このコップを贈ろうと思ってくれた奈須くんに、
感動せずにはいられません。
奈須くん、ありがとうね。
そう。奈須くんは部屋に上がるなり、シゲルさんの作った家具に細やかに反応。
帰って来たシゲルさんに本棚の制作を依頼していたのは印象的でした。
三人で晩ごはんを食べた後には二人で将棋に夢中となり、
シゲルさんは奈須くんを見送った後にも暫く将棋の余韻にふわふわとしていました。
男の子同士の遊びが、大変楽しかったのでしょう。
奈須くん。またすぐに、本当にすぐにでも、うちへ遊びに来て下さい。
シゲルさんは将棋が強くなりたいと、強い思いを輝かせています。