小さな作品はアトリエから持ち出して、食卓の上に大きなクラフトペーパーを敷いてダイニングで描いてくれる。
一緒に暮らしていても家にいる殆どの時間をアトリエで過ごしているシゲルさんが、寂しくさせないようにと努めてくれている行為なのだ。
わたしは一日を終えるためのお台所の掃除を済ませると、食卓の椅子に腰かけて、制作しているシゲルさんの指や筆が少しずつ動いていくのを黙って見つめている。
そうしていると、この時間って、なんだか遠い昔にファミコンゲームをする兄の横に座って黙ってテレビ画面を見ていた時の心持ちと似ているな…なんて。
自分ではゲームをするわけではないのに、ロールプレイングゲームなどのエンディングに勝手に感動したりしている。「わーわー」言うと兄にうるさがられて部屋から追い出されるかもしれないから、いつも黙って感動していたのだった。
わたしはシゲルさんの妹ではないし、うるさくすると逆に笑ってくれたりするが、なんとなく今この椅子に座っているわたしは妹なのだろうか。