ふたりで神戸へ行き、兵庫県立美術館で「解剖と変容:プルニー&ゼマーンコヴァー チェコアール・ブリュットの巨匠」を。
わたし自身は健康的な作品を求めているので、本展覧会は全く好みではなく、気持ちのいいものでもなかったけれど、この二人の作家からは美術教育やアートの世界において、誰にどう見られたいだとか、自分のキャリアがどうだとか、そういったものに捕らわれない、まっすぐなものが見えてくるように思えた。
これは言い換えてみると、毒されていない、どこまでも純粋な作品ということになるんだろうか。
なんだかもやもやするものを抱えながら、最後の展示室で上映されていた長編ドキュメンタリー映画「天空の赤」を観ると、その息もつかせぬ気塞ぎな映像にちょっと体調がおかしくなってくる。
なんという力なんだろう…と。
ゆらゆらとした気分で電車に乗り、元町・栄町まで。GALLERY301で、伊吹拓さんの個展『- 燻り-』。
ギャラリーの壁面を覆ってしまうほどの大作を前に、繊細で緻密な織り物を見ているような…自然と自然が静かに、でも確かに力強くぶつかり合う様を見ているような…そんな陶酔した気持ちが溢れ出てくる。
人は美しいものを前にするとため息をついたり、息を切らしてしまうほど呼吸が上がってしまったりするけれど、わたしは伊吹くんの作品にそうした自分の息を使っているように感じる。
そして、かつての体験や記憶を辿っていくのではなくて、今目の前にある真に迫ったものを実感する喜び。
それはまるで画面に宿る白に恋をするような心持ちだ。
過去作を拝見出来たのも、わたしには新しい体験で嬉しい。
花粉症で機能しない頭と嗅覚を、他の感覚で補っていくように…いつも何かが足りないわたしは、そうして外界を感知する。
(花粉症はシゲルさんも酷い…)