東京へ。
Restaurant-Iで開催される、+ART CLUB主催の第15回食とアートの会・西川茂『風景のつながり』トークイベントのため。
普段は高速バスを使うわたし達が「新幹線、乗るぜぇい」となれば、何故かいつも「こだま」で、シゲルさんはほぼ着席と同時に寝始めるし(東京駅まで起きない)、富士のてっぺんを仰ぎ見ることも出来なくて、わたしは持って来た文庫本をぱらぱらとめくっては時間を持て余していた。
東京へ着くと、こちらは関西よりも一足先に此処彼処が春めいていて、なんだか産まれたてのような心持ちになってくる(産まれたときの記憶などないけれど)。
夜のトークイベントまではまだ時間もあるし、青山霊園を散歩しながら桜を楽しんで、neutron tokyoで寺島みどりさんと中比良真子さんの展示を観に行って来た。
この春の日に、洗いざらしたブランケットを持って、誰も知らないお気に入りの場所へ出かけて行ったような…
お二人の作品には、そうした非日常の居心地のよさがあるように思う。
続きは夢の中で語られるような…そんな時間。
また偶然に寺島みどりさんのライブペインティングを拝見出来たのは、嬉しく贅沢なものだった。
一度宿へ戻り、この日のためにシゲルさんが買ってくれたワンピースに着替えて、トークイベントの会場まで。
誰も知る人のいない会場で、すぐにシゲルさんも見失い、次々とやって来る人達をぼんやりと眺めていた。
どの人も背筋が美しく、男性はとても紳士的で、女性はみんなきらきらと輝いている…
もさっとしたシゲルさんと泥臭いわたしはいったい誰なんだっけ…。
駆けつけて下さったneutron tokyoの方々にほっとして、その後は美味しい料理をほっぺたいっぱいに頬張る(食べたこともないお料理ばかりで、胃袋がビックリ!そして…主役のシゲルさんは慌ただしさの中、一口もこの素晴らしい料理を食べられなかったという残念さ…)。
帰り道、わたし達をどんどんと追い抜いていくテールランプを適当に目で追いながら、お酒で熱くなっていたシゲルさんの手のひらを、短くそっと握った。
鞄の中では、アポロチョコレートがカサカサと音を立てている。