夜行バスは予定より一時間半も早く新宿駅に着いて、まだ始まらない街の中に急に放り出された気分。
おまけに。着くなり、むちゃ雨。
下調べをしておいた素敵なカフェでのモーニングにはまだ果てしなく時間があり、結局マクドで時間を持て余すことになる。
目の前でシゲルさんは「漫画か…」と思うくらい舟を漕いでおり、わたしは友人への手紙を綴っていた。
やっと街は活発に動き出し、午前中の内にRestaurant-Iで作品の展示入れ替えを済ませると、午後から東京国立近代美術館で『ジャクソン・ポロック展』。
ポーリングやドリッピングの作品がよいなぁ。
一番の大作の展示には、平面であるのにインスタレーションかと思うくらいの贅沢な引きの空間。
けれど、展示はそれで終わりではなくて、亡くなる間際の苦しみもがいた作品で締めくくられていくことに、わたしは「なんか切なくなる…」と言うと、シゲルさんは「それは違うよ。最後まで闘い続けてたってことやで」とこたえたので、そうなのか…と思う。
外へ出ると、雨はどんどんと激しくなり、風も強くなってきた。
ひーひー言いながら銀座まで出て、メゾンエルメスで『望郷-TOKIORE(I)MIX 山口晃展 』。
「とても素敵な線を引く人だなー」と、ヨダレを垂らすように作品を観る(垂らさないけど)。
夕方には東京駅でえみちゃんと待ち合わせ、えみちゃんの旦那さん・大ちゃんの仕事が終わると、四人で晩ごはんを食べに行った(東京駅は無数に店があるのに、どこも空いていない…)。
少しの時間でもこうして楽しく会える嬉しさ。
えみちゃんが焼いて来てくれたフィナンシェは、シゲルさんの分とわたしの分をそれぞれにラッピングしてくれていて、シゲルさんは「えみちゃんはミナコのこと、よくわかってるわー」と感激していた(分けられていないと、全てわたしが食べる)。
夜行バスではいつものように眠れずに、一日強い雨に打たれ、身体はぐでんぐでんだったけれど(お酒は飲まない)、満たされた気持ちで宿までの道程を帰った。
えみちゃんのフィナンシェは、今にもじゅわっとバターが溢れてきそうな、とてもつややかな、いい色をしている。