昨晩は、久しぶりに母とふたりだけで過ごした。
シゲルさんはひとり、シングルルームでビールを飲んで酔っぱらっていたという。
そして。今日は、松坂で親同士との会食。
籍を入れる前にこうした場を設けることが本来の在り方なのだろうけれど、どうもわたし達はこういうところがなっていない。
それでも。親同士が、特にマッチーとお義母さんが、とても楽しそうに話している姿を前に、ほっとして、シゲルさんとわたしはせっせと普段はなかなか口には出来ないご馳走を頬張った。
会食を終えて、お義父さんとお義母さんを見送ると、また三人で松坂の町を歩く。空はどこまでも晴れ渡る。
「わたし、なんだか喋り過ぎちゃったわ〜」とか言っているマッチーの嬉しそうな横顔に、なんと言ったらいいのかわからない気持ちが込み上げてきた。
ふがいない、いとおしい、恋しい、あたたかくて、悲しい…
どれでもなくて、どれもそんな気がしていた。
城址から望む小さな町。先日の信州とは、また違った山々の連なり。
十月も下旬だというのに、陽射しに少し汗ばんで、それでも草木や風に秋を見つける。
行きとは違い、帰りの特急列車はいつも早くて、少し置いていかれそうな気分だ。
前の座席ではシゲルさんがよく眠っている。
列車が大阪に入ると、見事な夕暮れ。特別だった一週間は、静かに終わっていく。
おめでとう。ありがとう。またね。
母を、ふたりで見送る。
少し気の抜けたわたしはシゲルさんに手を引かれ、知らない駅を歩くみたいにホームを進んで行った。