iloilo。スパイスとスパイス料理、雑貨のお店。
谷町四丁目堺筋本町のちょうど真ん中辺り。一目で「あそこだ!」と思わせる、その外観。
以前、撮影させていただいた方が、ご主人と飲食のお店をオープンされたとのことで、さっそくシゲルさんを誘ってランチを食べに行く。
お会いするのはもう随分と久しぶりだったけれど、すぐに優しい笑顔で出迎えて下さり、お店の中へと歩みを進めればここが大阪だとは思えない異空間。まるで旅にでも来たような高揚感だ。
テーブル席のある二階へと階段を上ると、天窓から差し込む光により一層気持ちが華やいで、どこを見ても「わーわー」と声を上げたくなってしまう内装に心が踊った。この内装は、こつこつと手づくりでつくり上げたそう(なんと!)。
また一つひとつ様々な国で見つけて来られたというインテリアや雑貨を見ているのも楽しくて、シゲルさんとふたりで物凄く華奢な椅子に喜んで座り合ったりした(もちろん他のお客さまが帰ってから)。
どこをとっても人の手の温もりがあって、心地がよく、もちろん知り合いの方がオープンされたお店ということもあるけれど、ああ…ここは安心の出来る場所だなぁ、と思う。
そんな中でいただいたカレーのランチは、スパイスが効いているのにとても優しい味がして、しみじみと噛みしめたくなる。ワンプレートで三種類のカレーとプラオ(炊き込みごはん)、チャパティ(薄いパン)、パパド(インドのおせんべい)が楽しめるのも嬉しいです(肝心のごはん写真がないけれど…)。
わたしがいちいちテンションを上げながら食べて&写真を撮ってということもあるけれど、すっかりランチの営業時間も終わっていて、それでもご機嫌に長居をしてしまった。…ごめんなさい。
最後の最後までとてもあたたかなおもてなし。
こういった気持ちのいいお店は何度でも足を運びたくなるねぇ…と、シゲルさんとふたりで嬉しく思った。
(「またすぐに来ます!」と張り切って言ったのに、まだ行けていない。またジュジュッとよだれをいっぱいにして食べに行こう)
お店を出てから、気分よく此花まで歩く。
the three konohana。こちらもこの三月に新しくオープンしたギャラリー。
その第一回目の展覧会に、伊吹拓さんの個展『“ただなか”にいること』。
ギャラリーに入ってすぐに、あんまりにも力強い大作に胸をバンッと撃たれたような気分だった。
これまで伊吹さんの作品には物静かな女性が食器を洗う時の手の動きのような、なめらかで、上品で、繊細で、きめ細やかで、常に丁寧なものを感じて来たけれど、今回ギャラリーの壁面を大きく占めた四点の大作は、荒々しくて、知的で、目が離せなくて、もちろん繊細で丁寧な仕事であるのに、これまでとは明らかな「何か」が違う。
その「何か」が、頭の悪いわたしにはうまく言葉に出来ないのだけれど…
例えば、大陸のはじまり。
内部のマグマの動きが熱を放出して大陸を形成し、また更にその大陸に割れ目をつくって熱を放出していく。この地熱運動がつくり出す、何億年もの大陸の変化。
瞬間と永遠の積み重なり。人の感情や想いとは、また別のところにあるもの。あるべきもの。
なんだかよくわからないことを言ってしまっているけれど、伊吹さんの作品は純粋に身体が吸収していくもの、吸収されていくもののように感じる。
人が自然の流れからうまれて、自然に還っていくのと同じみたいに。
満たされた気持ちでギャラリーを出ると、シゲルさんが夕暮れの中を駆けて行く。トイレを探しているのだ。
大好きな人の内股小走り加減がおかしくって、微笑ましくって、わたしをまた夢中にさせる。
歩道橋の上。街に沈む今日。風は少しだけ初夏のかおり。