私鉄で。
隣の席には親子連れ。お兄ちゃんは4、5歳かな。気がついたら、わたしの腕にもたれてよく眠っていた。首から下げた水筒には、新幹線のイラスト。女の子はベビーカーの中で、きらきらした目をぱちぱちさせながら、じっとわたしを眺めている。キルトのコートは花模様。小さな小さなブーツがせわしなく動いている。お母さんは乗り馴れない電車だったのか、何度か降りる駅や目的地に行く方法を尋ねてきた。若い母親だった。まだ強い視線を感じるので母親の方を見ると、言う。「ごめんなさい。もう一つだけいいですか?」そう尋ねてきた、最後のその仕草。人差し指を唇の前に立てて、申し訳なさそうに表情をくしゃっとさせていた。ああ、子供たちもかわいいけれど、けど、お母さんもかわいいなぁ…目をまっすぐに見ながら思う。後ろの窓からの陽射しが暖かい。お兄ちゃんはすやすや眠ってる。妹はお母さんの膝の上に移動。わたしはヘッドホンをまた耳に戻して、なるべく動かないようにする。フアナ・モリーナが歌ってる。昼下がりが、気持ちいい。
今日の三時のおやつは何にしよう。