クリスマスムードの街を抜け、千日前の小さな定食屋に入った。
店内は母よりも年上の女性ばかりが働いており、歳を重ねた層の人々でたいそうにぎわいを見せている。
いつものように会話が途絶え途絶えのわたし達は、それぞれにお腹にやさしいものを注文して食べたのだった。
途中、お茶を運ぶ店員さんの手元が滑り、わたしのワンピースに湯のみや茶葉が落ちたのだが、「大丈夫ですよ」と言っても懸命に拭ってくれるので、その内に泣きたくなってくる。
歳を重ねてうんとしわしわになった手のひら。「優しい人でよかったわ」と、申し訳なさそうに朗らかな喜びを見せる顔。
ワンピースにしゅんだ茶はすぐに冷たくなり、何度か手でごしごしとこすった。
ツリーを見るわけでもなく、サンタクロースにも会えないが、それでもシゲルさんとわたしのクリスマス。
街はあっという間に夕暮れ。