三日目。
五時頃からごそごそと動き始め、バスで上高地まで。
朝方、晴天。
午前中いっぱいかけて森を散策し、熊の出没情報看板と何やら獣の糞を見かけてはいちいちソワソワとする(数日前に長野駅前の熊出没ニュースを見たばかり…)。
わたしは目の前の風景が開かれる度に「おぅ」「おぅ」と声を上げ、シゲルさんはそんなわたしを放っておいてどこか遠くの方へ行き風景の前にじっと佇んでいた。
感じる風の冷たさ、水蒸気を多く含む光のきらめき、空気の違いが目に見える。
目的地に着く頃にはあっという間に曇天となっていて、さっきまでの道程が嘘みたいに混雑した景色に戸惑う。
帰りのバスではふたりともぐっすりと眠り、沢渡停留所に着く頃には雨は土砂降り。魔法が覚めた。
午後はおやきを買いに行って、LABORATORIOへ行き、松本民芸館へ立ち寄る。
食事はお昼も晩も、ずっとお蕎麦。
シゲルさんはお腹が冷えやすいので温かい蕎麦ばかりを食べているが、わたしの蕎麦を味見しては「蕎麦はやっぱり冷たいのが美味しいよねぇ」「出汁より、塩やね」とか言っている。
真っ暗な帰り道。遠景は闇に包まれているはずなのに、山の気配を感じる。
長野県に感じる、このすごさはなんだろう…
シゲルさんの音痴過ぎるNUMBER GIRLをBGMに、窓外に流れていく景色をぼんやりと眺めながら思った。