何度かやって来る、無性に映画が観たくなる月間が到来し、せっせと毎週映画を借りに行っては、少しずつ観ています(一日に30分ずつとか…)。
今週の映画は、『春にして君を想う』(1991年/アイスランド/監督:フリドリック・トール・フリドリクソン)。
(以下、ネタバレです)
アイスランドの荒涼な自然を背景に、老人ふたりがうまれ育った故郷へと還っていく、静かでほの悲しいロードムービーです。
実際にアイスランドの厳しくて美しい風景が観られる数少ない作品ではあるけれど、この映画は「帰郷」を少し美しくファンタジーに描き過ぎているように思えて、わたしは観ていて戸惑いました。
希望を叶えてもらえたステラ(おばあちゃん)は幸せだったかもしれないけれど、ソウルゲイル(おじいちゃん)もほんとに幸せだったのかな…
いや。奥さんに先立たれ、子供や孫とは上手く関係性が築けず、どこまでも孤独になってしまったおじいちゃんが、かつて淡い恋心を抱いた女性と故郷へ戻れたのだから、それはそれで幸せだったのかな…
だけど。おじいちゃんが死んでいくラストシーンは、映画『ベルリン・天使の詩』へのオマージュともなっていて、なんだか余計に戸惑ってしまいます。(人間になったんじゃなかったの??とツッコミたくなるし、『ベルリン・天使の詩』を観ていないといったいなんのこっちゃ…やと思うし、、、)
おばあちゃんはなんだか幸せに満ちて死んでいったように見えたけれど、おじいちゃんのあのクタクタっぷりが…あの究極の孤独感が…ああ…
人の一生も自然の流れの中の一つ…というのもわからなくはないけれど、やっぱりわたしは人の死をそんなふうには思えない。
それが、まだ自分の「老い」を想像することが出来ないからなのか…なんなのか…今はまだよくわかりません。
ただ。「人の生と死を見つめた、幻想的で美しい映画でした」とは言えない、強い何かを感じたのは確かです。
この映画を観たことがある方は、また感想を聞かせて下さい。