【夏筆記、貳。】
三時起床。マッチー一緒に起きてくれて、ありがとう。眠たい空気の五時列車。大阪。近鉄特急。JR紀勢線。迫る山と濃紺の海。名刺。冷房の利いた車。カーステレオからはくるりの新譜。ゆっくりと山道を走る。小さな町へ。開け放たれた窓。窓から見える風景。小さな手形。写真の中の笑顔。「カラー文楽の魅力」。お昼の尾鷲節。鰻が捌かれていく。ふりかけの子。映画のような木造小学校。校庭からは蒼い海。木登りの銀杏。双眼鏡。港町。小さな灯台、赤白白。透き通った海に綺麗な魚。夏の子供たち。強い太陽。ユリの花。海水浴場で裸足。緑とミドリ。ズボンずぶ濡れ。横顔。五時の合図。「真夜中のころ・ふたりの恋」。七里御浜海岸。夕凪。グラデーション。飛行機雲。セルフタイマー。コンビニエンスストアの明かり。アラカルトピッツァルッコラリングイネ。「NIKKI」。くしゃみは二回。はじめてこの目で見た天の川。三十分露光二回。花火キレイ。ペルセウス座流星群、ありがとう。「また明日」。夜のメール。朝のメール。楯ケ崎ハイキング。この夏一番の暑さ。熱中症予防飴は甘塩っぱい。帽子タオル手ぬぐい、ふたり分。パンパンのリュック。ぐりぐらぐりぐら。山道の眼下は、すぐに海。ゆっくりとした歩調。控えめな鼻歌。後ろから声をかけて、何度もシャッターを切る。蜘蛛の巣や枝を除ける指先。きちんと休憩。辿り着いた灯台千畳敷、日陰なし。水平線。木陰。レジャーシート。冷たいお茶に冷たいタオル。お母さんのおにぎりと卵焼き。木陰から眺める。突然のムカデ。急いで移動。映画「GERRY」みたいな岩の下。移動大成功。完璧な風光明媚。光る海。森から頭を出す真っ白な灯台。魔法瓶。夏の蜜柑。寝息。影が長くなっていく。午後三時半。帰り道はいつだって早い。重い荷物、本当にありがとう。家へと戻る。袋いっぱいの蜜柑。「また来てね」「また来ます」。出発まで一時間。「JUBILEE」。車はゆっくりと走る。火力発電所の煙突。駅が見える。入場券。最後まで荷物を持ってくれる細い腕。三回振り向く。紀勢線、満席。「どうぞ」と声をかけてくれた、四人掛け席の三人家族。仲のいい家族の会話。おやつを貰う。娘さんに蜜柑。うたた寝。「起きて」のメール。近鉄特急。遠くに見える通天閣の明かり。shuffleからは「Superstar 」「春風」。大阪の空。JR神戸線はやめて、阪急電車弱冷車。窓外の街灯り。家までの坂道で「Baby I Love You」。見上げた空に、星は疎ら。「ただいま」「おかえり」。鞄から取り出した携帯電話に、メッセージ。「ありがとう」「おやすみ」。一人で行った、ふたりの旅。