昼。インターホンが鳴り、大きな一通の封筒が届きます。
その中には、『モンロースマイル』という名の写真集と一枚の手紙。
手紙にはこう書かれてありました。
「今年中にめろんちゃんに『モンロースマイル』を届けたかった」
それは一つの懐かしいラブレターを開いた時のような…
胸がじんわりと切なくなっていく心持ちと似ていました。
開いたページの中で雪は降り続き、
美しい指を持つ少年は僅かな光の中で音を失ったかのように思えます。
また、ザクロの木の下に立つ少女の笑みに女性を感じ、
どこまでも耳の後ろで豊田道倫が鳴っていました。
何かが確実に終わっていき、
山はゆるやかに動き始めていきます。
西光くん。
来年また貴方に会える事が、わたしはとてもとても楽しみです。



夜。インターホンが鳴り、扉を開けると手渡されたケーキボックス。
今夜はシゲルさんが“2008年も「ありがとう」ケーキ”を買って来てくれました。
みかんのタルトとナッツのチョコレートケーキ。
「いいチョイスねぇ」と、わたしはずっとだらしなく微笑みながら、
二つのケーキを半分に切り分けていきます。
思えば、今年はそれはそれは予想外な一年でした。
ニューヨークで暮らしていたシゲルさんに会いに行き、
今はこれまで全く無縁だったこの小さな町に
シゲルさんとふたりで暮らしているのですから。
優しい気持ちを持てない夜がなかったわけではありません。
それでも、わたしはあたたかな日の春風のような人に愛されて、
少しずつ何かが変わりはじめたように思います。
お台所で鍋蓋とじっと見つめ合い、
黒豆はふつふつと音を立てながら煮えていきます。
それまでも2008年もこれからも、ありがとう。
わたしはいつもいつも有り難いのです。