朝起きて身支度を済ませ、まだベッドの中で眠っているシゲルさんを起こし、ふたりで宿泊したホテルの朝食をいただいた。
朝ごはんを食べ終えると、シゲルさんはフェアの会場へ向かうため一足先にホテルをチェックアウトし、わたしは少しゆっくりとしてから新宿へと向かう。
新宿は晴天。まだ動き始めたばかりのぎこちない朝の雰囲気と、心地の良い空気の冷たさを感じる。
コニカミノルタプラザで上野雅之さん写真展『砂漠の人』(2009年11月21日〜11月30日)。
上野さんとは2005年の富士フィルムフォトサロン新人賞で出会った(上野さんは新人賞を受賞され、わたしは奨励賞だった)。互いに案内状などのやり取りはしていたけれど四年ぶりの再会で、それでも久しぶりな感じもせずに、写真を拝見しながら和やかに沢山の話しをする。
この和やかさも、会場に並んだ砂漠に生きる人々の写真にも、上野さんの人柄がすごく現れているように思う。上野さんは国を越えてもなお、人々に愛される人柄なのではないだろうか。
アジアに旅をする機会があるのなら上野さんにプランニングしてもらう約束をし、会場を後にして百貨店へと向かった。
お昼ごはんを食べるために事前に行きたい店を調べていたのだ。土曜日の百貨店は混雑していて、目当ての店に入るのには三十分程並ぶ。
順がまわってきて案内された席へ着くと、すぐにふと寂しい気持ちが込み上げてくるのがわかった。
ひとりで外食する事がいつぶりであったか思い出せなかったからだ。こんな事ならコーヒーショップなどで簡単に済ませればよかったと、いそいそと食事を頬張って、さっさと店を出てしまう事にする。
ひとりの食事ってこんなにも楽しくないものだったかなぁ…と思いながら、シゲルさんを想った。シゲルさん、お昼ごはん何食べたんだろう。
百貨店を出たところにあるKrispy Kreme Doughnutsでお土産を買って、列車に乗って南青山のneutron tokyoまで。
一階メインギャラリーと二階サロンでは、笹倉洋平さんの個展『ツタフ』(2009年11月18日〜12月6日)。京都でも拝見した大作をまた観る事が出来たのだった。10m程のトレーシングペーパーに描かれた無数の線を眺めながら、植物なのかなと思いつつも、やっぱりわたしは夜の海にいた。
三階のミニギャラリーでは、マスジョさんの個展『ハンカチーフ』(2009年11月18日〜12月6日)。真っ白なハンカチーフに砂をのせた作品をじっと見入っていると、息を止めてしまうような緊張感がどっと胸に込み上げてくる。展覧会が終わればこの作品達はどのように還っていくのだろうかと、そっと思いをめぐらせた。
ギャラリーの広い窓から見えるこぶしの木が立つ中庭はやっぱり素敵で、スタッフの方からいただいたおやつをポッケに忍ばせ、今度は原宿まで行く事にする。
ちょうど東京に来ていたFT=manくんと会う約束。待ち合わせをして、街を歩いたり、お茶をしたり。たった少しの時間に、こうしてスケジュールを合わせてくれる人がいる。ほんとはわたし全然寂しくなんかないんだなぁ…と、FT=manくんと別れた後の山手線の中でじーんと思った。
再び、新宿。
シゲルさんと待ち合わせをし、フェアに来てくれたお友達と晩ごはんを食べに行く。案内していただいたイタリアンのお店はとっても美味しくて、お話しするのも聞くのも上手なおふたりに、話す事が不得意なシゲルさんとわたしは終始ご機嫌であったのだった。
美味しい時間を、ごちそうさまです。
夜行バスが発車する停留所までおふたりが見送って下さり、ありがたく夜の東京を後にする。
バスが出発すると間もなく、後ろの座席に座ったシゲルさんから寝息が聞こえてくるのがわかった。わたしはすぐには眠れない身体をバスの揺れに任せ、iPodのイヤホンを耳に押し込む。
シゲルさんと生きていくという事は、嬉しくって、寂しくって、どこまでも恋しい。