映画『paris』(2008年、フランス、監督:セドリック・クラピッシュ)。
捉え方は様々です。
そして、わたしは観終えた後に「哀しいなぁ…」と思ったのだった。
冒頭では心躍るパリの風景とスタイリッシュなカメラワークにつかまれながらも、何故だかどんどんと心が離れていくのを感じる。
この街で生きて、呼吸をして、歩いている事を「幸せ」だと気づけない人々。
それをあきらめのように悟った彼でさえも、すぐ近くにあったであろう「幸せ」を最後まで拾い上げる事は出来なかった。
淡い期待感を抱き続けていたものの、そんなラストの数分間がどうしようもなく哀しくって…。
『猫が行方不明』(96年)、『スパニッシュ・アパートメント』(02年)と観てきて思うのは、みんな誰にでもどうしようもない部分はあって、それでもセドリック・クラピッシュはそんな人間のどうしようもない部分をキュートに描こうとしていること。
いつでもパリの風景を素敵に切り取りながらも、風景をも人間くさく見せてしまうこと。
人を捉えていながらも全てが風景になってしまう映画とはまた違った魅力がある。
そして、一緒に観ていたシゲルさんは「いや、ぼくは面白かったな」、と。