神社でも寺でもないのだが、父の墓に手を合わせ懇願する。
今起こっている苦しい出来事に一刻も早く晴れ間が出るようにと。
普段はおとぼげ気味の母が切なる想いで手を合わせていたことを、わたしだけは忘れないでおこうと思った。
水にさらし真っ赤になった手のひらで、母とふたり「キャーキャー」言いながら墓を磨く。
これも父がくれたいとおしい時間かな…などと思いながら。
帰りのバス。母は「ミナちゃんがいてくれて、よかったわぁ」、そんなふうに言った。