きいろいゾウ西加奈子小学館)。
松野さんから「まるでミナコさん達のように思えます」と、それは思いがけず届いた。
西加奈子さんの小説といえば過去に『さくら』を読んだことがあったけれど、わたしには響かなくて、『きいろいゾウ』の存在もずっと知ってはいたものの、映画化が決まって更にわたしの手のひらからは遠退いていったような感じがしていた。
だけどこれもご縁だなと読み始めてみると、それはそれはあっさりとわたしの中に入り込んでくる。
近く近く、あんまりにも近くに。
作中の「ムコさん」がどんどんシゲルさんに思えてきて、「ツマ」はどんどんとわたしだった。
西加奈子さんは、わたし達の暮らしのこと知ってんのかな?!」そんなふうに思ってしまうほど。
ツマが蛇口を握るムコさんの手をミロの瓶で砕いてしまおうとする。
もちろんシゲルさんにそんなことをしたことはないけれど、この小説に描かれる明も暗もわたし達の暮らしとよく似ていた。
物語りが後半になると、なんだかずっとジェットコースターから降りられなくなった人になってしまったみたいに息苦しくなる。
上手く息が出来ないまま、気がつくと最後はムコさんもツマも全くわたし達ではなかった。
わたし達はわたし達でしかないことに気づく。
当たり前過ぎて、ちょっと阿呆かと思うけれど、それでも強くわたし達はわたし達でしかないことを知る。
ベッドの中で小説を読み終えると、もう明け方だった。久しぶりに物凄い勢いで小説を読んだ。
横ではシゲルさんがのんきにイビキをかきながら眠っている。
いつもはうるさくて「チッ」とか思うのに、なんだか微笑ましくて、ぬくぬくと布団に包まれて目を閉じた。
いい小説を読んだなぁ…
シゲルさんは“必要なものリスト”に「ぼくのツマ!!!」とは書かんだろうけど。。。
松野さん。素敵な贈り物を、ありがとうございましたー!