この街は、今日も晴れ。
朝ごはんを終えた後、みんなで海のような湖へHanaちゃんの散歩に出かけた。



気温こそはまだ低いものの、木々の芽吹きや、花の綻びを見つけて、冬の間には忘れていた土や緑のにおいを思い出す。
そして、日本を想ったりする。それは例えば、桜のこと。悲しかった学生時代のこと。どこにも行けなかった恋のこと。夢とうつつの間にあるようなもの。
国は変われど、春の寂しさは変わらないものなのだな…。とかなんとか思ったりしながら。
ほんの少し日本から離れているだけなのに、もうずっと遠くに、ずっと昔に感じてしまうのは、いったい何故だろう。




湖畔までやって来ると、今朝は多くの犬達と飼い主達が集っていた。
別に約束をしているわけではないけれど、みんなこんなふうにしてここに集まって来るのだそう。
犬達は飼い主が投げてくれる枝を追いかけて、思いっきり湖を駆け回ったり、枝を奪い合ったり、じゃれ合ったりしている。
その光景は、あまりにも爽快で、愉快で、和やかなものだった。
きっと。元気が出ない偏屈な時であっても、この様子を見ていたら、それが大したことではないように思えてくるのかもしれないな。




そんな中、おっちらおっちら…と、マイペースな犬。
それでも、飼い主が投げてくれた枝を追いかけて(走らないけどね)、しっかりとその枝をくわえて戻って来る。
なんてラブリーなんやー。




湖畔集会を終えた後も、ゆっくりゆっくりと散歩をする。
わたし達ふたりが色々なところをよそ見しながら、あんまりにも遅く歩くので(シゲルさんは、そんなわたしに付き合ってくれているのだが…)、満江先生達に連れられて前を行くHanaちゃんが何度も振り返る。
みんな一緒がいいのだろうか。それとも、弱っちいわたし達を心配してくれているのだろうか。
その振り返る姿を遠くに眺めながら、犬はいいなぁとしみじみ思った。
いつか必ず、わたしも犬の家族がほしいと思う。
(写真はじいちゃんの帰りを待つ二匹。めちゃ吠えられるなと思っていたら、後ろからにこにことじいちゃんが帰って来た。犬もかわいかったけれど、じいちゃんもキュートだったなぁ)



オランダの天気は、どんな季節でも変わりやすいのだそう。
日本のように一日中雨が降り続くことは少ないようだけれど、特に春先などは雨がよく降るのだそうです。
(わたし達が滞在していた一週間と少しの間、一度も雨に降られなかったというのは本当にラッキーなことだったみたい)
さっきまであんなに晴れ渡っていた空も、あっという間にこの曇天。けれど、夕方にはまた晴天に。



お昼ごはんに、奥さまがオランダのパンケーキを作って下さる。
Pannenkoeken(パンネンクーケン)という、クレープのようなピザのようなパンケーキ。
デルフトの街でも食べたのだけれど、そのぼんやりとしていた味のことを満江先生と奥さまに伝えたら、「美味しいのを作ってあげるね!」と言って下さったのだった。
シゲルさんとわたしは、かすてらが焼けるのを待つ、ぐりとぐらみたいだ。
お台所は、甘いバターの香り。



小さなパンネンクーケンには、ほうれん草と人参の野菜入り。



そして、こちらがベーコンとチーズのパンネンクーケン。
専用のシロップと粉砂糖をまぶして、くるくると巻いていただきます。
外側はパリパリとしていて、内側はもちっとしている生地。口から鼻へと抜けていく、たっぷりとしたバターの風味。ベーコンとチーズの塩っぱさに、シロップとお砂糖の絶妙な調和。
あぁーあ!
今こうして書いていても、口の中が美味しい。自分のいやしさに飽きれてしまうけれど、けど、美味しい。
それは、きっと。みんなで仲良く頬張った、記憶の味でもあるのだろうな。
(日本に帰って来てから、もう何度もパンネンクーケンを作っています。嬉しがって、友人に振る舞ったりも。。。)




午後から。満江先生とシゲルさんは、先生の愛車でドライブへと出かけた。
わたしは奥さまと一緒に、リビングで洗濯させてもらったものを片付け、のんびりと話しをする。
その後、奥さまと娘さんの三人でスーパーマーケットへ。
こちらに来てから何度もスーパーマーケットを利用しているけれど、奥さまの話を聞きながら買い物をする時間はとても楽しかった。
この日は、今夜の晩ごはんを作らせていただくことになっていたから、野菜についても色々と質問をする。
例えば、キャベツ。お店に並んでいるキャベツは三種類あって、日本のように丸いキャベツもあるけれど、こちらでは先の尖った円錐型のキャベツが一般的なのだそう。
円錐型のキャベツは、丸いキャベツのように葉がつるりとしたものと、驚く程くしゅくしゅと縮れた葉のものがある。
今夜の献立に考えていたロールキャベツにはどのキャベツがいいのか訪ねてみると、縮れた葉のちりめんキャベツがよいそうで、実際にそのキャベツで調理をしてみたら、やわらかく、扱いやすくて、葉が破れたりすることがなかった。いいなー、日本でも簡単に手に入ればいいのに。
買い物した袋の中には、ちりめんキャベツ、ミンチ500g、玉ねぎ、人参、りんご、サワークリーム、ビーツの水煮。



帰宅したシゲルさんと一緒に、夕方からお台所をお借りする。
(この写真は、三階のお部屋で撮ったもの)
窓が大きくて、天井の高い、素敵な台所に立ち、わたし達は手先に想いを込めた。
どこの国でも、料理をする音はいいなと思う。