今日はぐだぐだです。。。

朝。「雨の音がするな…」と、部屋のカーテンを開ける。
やっぱりのじゃじゃ降り。天気予報は全く外れず…。
ここヴィークは、アイスランド国内でも雨がよく降る地域なのだそう(屋久島的な?)。
「昨日の晴れは、ほんまに奇跡的や…」とか、「あのオーロラは幻か…」とか、完全に根暗モードが復活。。。
ああ…。



今回の宿は、はじめての朝食付き。
朝ごはんは8時間半から共同のダイニングルームで始り、宿泊客全員と一緒に食卓を囲む(客室が4つの小さな宿)。
テーブルの上に並べられていたのは、パンケーキ、バターロール、ハム、チーズ、トマト、きゅうりなど…
ハムが並べられていたお皿にはラム肉のスモークもあって、わたしはたぶんはじめてのラム肉。スモークさが絶妙で、臭みも感じず、美味しくいただくことが出来た(アイスランドのラム肉は格別だそうです)。
けれど…
思いがけず、シゲルさんが宿の奥さんにいじわるをされて、場の空気が一瞬かたまる。
そのあからさまな態度に、わたしは驚いて暫くどきどきしていたけれど、なんだか段々と腹が立ってきてしょうがなくなった。
「くっそーっ。英語喋れたら、文句言ってやるのに!」
「ミナちゃん、喋れても言えないでしょ…」
その後、宿泊客のみんなが優しく接してくれるようになって、それもどこか悲しかった。
なんだかよくわからない悔しさがあるけれど、これも旅の一つの経験なのだな。。。



10時頃に、宿をチェックアウト。
昨日は13時間を超えるロング・ドライブだったので、今日はヴィークの周辺を散策して、レイキャヴィークの街までゆっくりと時間をかけて戻ることにしていた。
この辺りには、ブラックサンド・ビーチと呼ばれる絶景を望むことの出来る海岸もあるし、セリャラントスフォスやスコゥガフォスの滝などでものんびりとしたい。
そんなふうに考えていたけれど、ブラックサンド・ビーチへと向かう途中、雨は身の危険を感じる程の土砂降りに。。。
暴風と濃霧との怖さも相まって、わたし達はビーチへ行くことをあきらめることにした。すぐそこなんだけれど…。
再び、予定は白紙に。。。



ヴィークからレイキャヴィークまでは車で二時間ほど。
ワイパーが全く仕事し切れていないのを眺めながら、もうこの旅も終わるんやなぁ…と感じた(まだアイスランドには数泊するし、オランダにだって戻るのだけれど)。
途中、スコゥガフォス(Skógafoss)へは立ち寄ることに。
一号線から少しだけ奥まった場所にあるので、昨日は通過していたところ。
絶え間なく降りしきる雨の中でも、観光バスは続々とやって来る。
けれど、バスから降りてくる人達は、皆この豪雨にとても不快そうな表情を浮かべていた。
晴れの日と雨の日とでは、雲泥の差があるものねぇ…
そんなふうに感じながら、わたしも皆と同じようにむっつりとした表情のまま、「シゲルさん、そこ立って」とか言って写真を撮る。



晴れの日にはうきうきとしたりするのかもしれないけれど、むっつりとした表情を変えることなく滝のそばまで行ってみると、ここは崖上へも登ることが出来るようだった。
この雨の中でも急な傾斜を登って行く人達の姿がある。
大粒の雨と滝からの水煙を受けて空を仰いでいると、崖の奥まった岩肌には無数の白い鳥が巣ごもりしているのが見えた。
昨日もよく見かけた鳥だけれど、なんという名前の鳥なのだろう。
あまり滝には惹かれないシゲルさんが「もう行こうよ」と声をかける中、わたしは暫く雨に打たれながらじっとしていた。それはなんだか滝行みたいだな…とか思いながら。



80キロほどの距離を、雨に気をつけながらゆっくりと走る。
昨日も立ち寄ったハヴォルスヴォルールという小さな町のN1(ガソリンスタンド)まで来て、ここのNesti(カフェ)でお昼ごはんを食べることに。
ちょうどお昼時ということもあったけれど、カフェはなかなかのにぎわいを見せている。
素っ気ないチーズバーガー(1300円ほど)をオーダーして、外の雨とカフェの店内を交互に眺めながら食べた。
「昨日のきらきらとしていた気持ちが、もうどこか懐かしく感じる…」と思いながら、時間をかけて食べるお昼ごはん。
上手く言葉には出来ないけれど、わたしが持っている旅のタンクというものがあるのなら、そのタンクは昨日の氷河を目の当たりにして、既にいっぱいになってしまったようだった。
だからなのか…まだ旅は続いているのに、もうどこかアウトプット出来る方法ばかりを考えている。
カフェを利用している人達もどこかぼんやりと食事をしているように見えて、この国の雨がいろいろなものを滞らせてしまうのを見てしまったような時間。



午後。更に、雨は強まる。
一度、給油のために車から降りると、バケツの水をかぶったようになって、息をするのが苦しかった。
顔や身体に当たる雨粒が痛いと感じるのは、初めての体験かもしれない。
雨は風と力を合わせて、ゴーゴーという音を立て続ける。
この旅の給油では、シゲルさんが給油作業をして、わたしがお会計をするという流れだったのだけれど、この豪雨ではもう何もかもが煩わしい。
アークレイリでもそうだったのだけれど、こうした余地のない体験にシゲルさんもわたしも途中から笑いが止まらなくなってしまって、車に戻ってからもケラケラと笑う。
そして。一頻り笑い終えた後、わたしは助手席ではじめて眠りに入ってしまった(朝から少し体調が優れなかった)。
「ミナちゃん、着いたよ」というシゲルさんの声が聞こえると、目の前の風景は一変。車はレイキャヴィークの住宅街を走っている。
すぐ近くには、街のシンボル的存在でもあるハットルグリムス教会(Hallgrímskirkja, ハトルグリムスキルキャ)。
教会に程近い宿にチェックインをして、これまで履いていたスノーブーツを脱ぎ、スニーカーへと履き替える。その時に感じた足の軽さに、「ああ…アイスランドの旅が終わってしまった」と、今度は本当に思った。
どこかぽっかりとした気持ちを抱えながら、宿から一番近い、ハットルグリムス教会の前にあるカフェ(Café Loki)へ行くことにする。



店内から教会を望むことが出来るため、カフェは観光客でいっぱいだった。
わたし達も窓際のテーブルに席を取り、超ミニスカートの綺麗な店員さんに接客してもらう(普通のカフェです)。ずっと荒涼な風景に身を置いていたからか、店員さんからは物凄いシティ感!
レイキャヴィークは、なんて都会なんや…。
Lokiで注文したのは、ピョンヌキョクールというアイスランドのパンケーキ。
オランダで食べたパンケーキ(パンネンクーケン)も薄く焼かれていたけれど、ピョンヌキョクールはクレープのように薄くて、中にはクリームとジャムがサンドされている。
アイスランドに来てから食べている甘い物は、どれも素朴で本当に美味しいのだけれど、これはベリーベリーうまかった!
「もう一回、注文する?」
「なんか恥ずかしい…」
久しぶりに感じた都会のにおいに、わたしはどこかもじもじとしてしまう。。。



!!?
カフェの窓から外の様子を眺めていると、まさかのチャウチャウ!
北欧でチャウチャウだなんて!!!
シティには、なんだかシューッとした犬ばかりがいるのかな…と思っていたけれど、あのぽてぽて感とふがふが感にどっと気持ちが和んでいく。ラブ、チャウチャウ。
こんな極北の地まで、彼はどんなふうにして来たんかしら?!
(明日、再会出来ます!)



レイキャヴィークまで戻り、もう危険な道を運転することもなくなったからか、シゲルさんはどこかほっとした表情を浮かべていた。
今から八日前。ケプラヴィーク国際空港に降り立った時、ふたりで一面灰色に覆われた世界を前に力を落とす。
それから殆ど毎日、これまで走ったこともないような道を進んだ。ホワイトアウトに手足が震え、濃霧や豪雨に身体が竦む。
そんな中でも冷静にハンドルを握り続けたシゲルさんの疲労感は、きっと計り知れないものだったと思う。
シゲルさんの奮励があってこその旅だった。
わたしは感謝の気持ちを伝えるのも上手くはないし、愛情表現も下手だけれど、今回の旅を経て、この人と共に生きていけるというのはなんと心強いのだろう…そんなふうに感じている(本人には直接言わない)。
ピョンヌキョクールを「一口ちょうだい」と言って、結局半分以上食べたシゲルさんに「キーッ」となりながら、わたし達の旅は最後まで元気に続く。
(Lokiでの写真が四枚も…)



晩ごはん。
オーブンの使い方がわからずに、丸焦げになったピザ。。。